内装制限とは?店舗づくりとの関係と取り組み方を解説

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内装制限とは?店舗づくりとの関係と取り組み方を解説

建築基準法では建物の内装材に関する様々な規定がありますが、店舗やテナントビルは内装制限の対象になることが多いです。

内装制限の対象になると使用できる建材が限られ費用も高額になるため、店舗づくりに大きな影響を及ぼします。

今回は内装制限の目的や基本的な内容、対象となる建物などを詳しく解説します。

店舗づくりで内装制限に注意すべきポイントもまとめましたので、物件探しやプラン作成に取り組む前にチェックしておきましょう。

 


コラムのポイント

・内装制限の内容や不燃材・準不燃材の違いなどを解説します。

・一定の条件を満たすと内装制限が緩和されるケースもあります。

・所轄消防署への事前相談など、店舗づくりにおける内装制限の注意点も紹介。


 

内装制限とは?

内装制限対象のカフェ

内装制限は建築基準法で定められていて、壁・天井に燃えにくい材料を使用する規制のことです。火災が広がったり避難が遅れたりするのを防ぐのが目的で、公共性が高い建物や多くの人が集まる大規模施設が対象となることが多いです。

内装制限を守らないと建築基準法違反となり、個人は懲役3年以下または罰金300万円以下、法人は一億円以下の罰金が課せられる可能性があります。

身近な場所では一般住宅のキッチンも内装制限の対象となり、コンロの周囲を準不燃材で仕上げるよう指定されています。

内装制限の対象となるのは建物の壁・天井で床は含まれません。内装制限で指定される「防火材料」の要件は次の通りです。

 

防火材料の要件

  1. 燃焼しないものであること。
  2. 防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。
  3. 避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。

建築基準法第百八条の二

 

上の条件を満たす時間によって、不燃材料・準不燃材料・難燃材料に分類されています。

 

不燃材料

不燃材料は加熱開始後20分間防火材料の要件を満たすもので、次のような素材が含まれます。

 

  • コンクリート
  • れんが
  • 陶磁器質タイル
  • 繊維強化セメント板
  • 厚さ3mm以上のガラス繊維混入セメント板
  • 厚さ5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
  • 鉄鋼
  • アルミニウム
  • 金属板
  • ガラス
  • モルタル
  • しっくい
  • 厚さ12mm以上のせっこうボード(ボード用紙原紙の厚さが0.6mm以下)
  • ロックウール板
  • グラスウール板

 

準不燃材料

準不燃材料は加熱開始から10分間要件を満たすもので、次のようなものが認められています。

  • 厚さ9mm以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さ0.6mm以下)
  • 厚さ15mm以上の木毛セメント板
  • 厚さ9mm以上の硬質木片セメント板
  • 厚さ30mm以上の木片セメント板
  • 厚さ6mm以上のパルプセメント板れんが

 

難燃材料

難燃材料は加熱開始から5分間要件を満たすもので、次のような種類があります。

 

  • 厚さ5.5mm以上の難燃合板
  • 厚さ7mm以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.5mm以下)

 

仕上げ材の防火種別について

上記の不燃材料・準不燃材料・難燃材料は下地材の話で、壁紙などの仕上げ材との組み合わせによって分類が変わることもあります。

例えば壁紙に記載されている「防火種別」は防火性能を示すもので、下地との組み合わせで不燃・準不燃・難燃が変化します。

 

防火種別

下地直張りの場合

不燃材料

準不燃材料

金属板

1-1

不燃

不燃

準不燃

1-2

不燃

準不燃

難燃

1-3

不燃

準不燃

1-4

不燃

不燃

不燃

1-5

不燃

不燃

難燃

1-6

不燃

不燃

1-7

不燃

準不燃

不燃

1-8

不燃

準不燃

準不燃

参照元:一般社団法人日本壁装協会

 

例えば準不燃材料の下地を使う場合、防火種別1-1の壁紙なら不燃、1-3だと準不燃と分類が変わります。壁紙の防火種別は1~6種類までありますが、今回は一部を抜粋しています。

内装制限指定の内容や使用する壁紙によって、下地を選ぶ必要もあり得るということですね。

しっくい・珪藻土などほかの仕上げ方法も、組み合わせる下地材の素材や厚みによって防火材料の分類が変わることもあります。

 

内装制限の対象となる建物

内装制限の対象となるビルの外観

内装制限の対象となる建物は以下の通りです。

 

用途

対象となる条件

内装制限の内容

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場

(耐火建築物)客席400㎡以上

(準耐火建築物)客席100㎡以上

(その他の建築物)客席200㎡以上

居室:難燃材料

通路など:準不燃材料

病院、診療所(患者の収容施設のあるも

の)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等

(耐火建築物)3階以上の部分300㎡以上

(準耐火建築物)2階部分300㎡以上

(その他の建築物)2階部分200㎡以上

居室:難燃材料

通路など:準不燃材料

百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業

(耐火建築物)3階以上の部分1,000㎡以上

(準耐火建築物)2階部分500㎡以上

(その他の建築物)2階部分200㎡以上

居室:難燃材料

通路など:準不燃材料

地階の居室等で上記用途のもの

すべて対象

居室:準不燃材料

通路など:準不燃材料

自動車車庫、自動車修理工場

すべて対象

居室:準不燃材料

通路など:準不燃材料

無窓の居室

すべて対象(天井高6m超えるものを除く)

居室:準不燃材料

通路など:準不燃材料

火気使用室

(住宅)二階以上で最上階以外が対象

(住宅以外)すべて対象

火気使用室:準不燃材料

大規模建築物

(3階建て以上)500㎡を超える

(2階建て)1,000㎡を超える

(1階建て)3,000㎡を超える

 

居室:難燃材料

通路など:準不燃材料

地下街

100㎡以内に防火区画された部分

200㎡以内に防火区画(20分遮炎性性能を有する防火設備を除く)された部分

500㎡以内に防火区画(20分遮炎性性能を有する防火設備を除く)された部分

居室:準不燃材料

通路など:不燃材料

 

建物の用途や床面積、耐火性能などによって内装制限の有無や内容が変化します。

例えば飲食店を出店する場合、床面積200㎡以上だと内装制限が掛かりますが、耐火建築物で2階以下なら不要になります。

つまり業種や店舗の床面積に加えて、選ぶテナント物件によっても内装制限の有無が変わるということですね。

 

内装制限の緩和条件とは?

内装制限の緩和対象となる学校のカフェ

内装制限の対象になっている建物でも、一定の条件を満たすことで緩和されるケースもあります。

 

  • 警報設備やスプリンクラー等を設置する
  • 天井高が3メートル以上ある
  • 屋外へ避難できる出口を設ける
  • 100㎡以内ごとに準耐火構造の間仕切りや防火設備で区画分けする
  • IHコンロを使用する

 

上記はあくまで一例で、実際は床面積や建物の構造などが関係するためここですべてを説明するのは難しいです。ただし「内装制限の建物でも緩和する方法がある」ということを覚えておくと、物件選びや店舗づくりで役に立つかもしれません。

 

店舗づくりにおける内装制限

内装制限のあるホテルロビー

 

計画初期段階での確認が重要

前述したように内装制限の有無は出店する業種や床面積、選ぶテナント物件の構造などによって変わります。

内装制限の対象になると内装材の選択肢が狭まり、建材や工事費も高くなります。概算見積もりで進めて契約直前で内装制限が発覚すると、費用やスケジュール計画が狂ってしまうということです。

店舗のコンセプトや規模を決めたり物件探ししたりする初期段階で、内装制限の有無を確認することが大切です。

 

消防署への事前相談が重要

内装制限は建築基準法で定められた決まりですが、実際に検査を行う所轄消防署の指導官によって判断が異なるケースも多いです。

業種や内装レイアウトなど現場状況を踏まえ、指導官から基準より厳しい指示を受けることも少なくありません。

 

内装制限の対象となるサウナの窓ガラス

例えばサウナの窓は耐火ガラスで良いケースもあれば、指導官の現場判断で網入りガラスを指定されるケースもあります。

ギリギリのタイミングで相談や届け出をすると、思わぬ仕様変更などが発生して施工スケジュールが遅れてしまうことも考えられます。

内装制限のある建物や業種の店舗づくりでは、現場を熟知した専門家と一緒に所轄消防署へ事前相談をしてトラブルを防ぎましょう。

 

まとめ

内装制限は店舗づくりに大きく影響するポイントなので、基本的な内容を抑えておきましょう。

細かい部分の確認やすり合わせは現場ごとに行うべきですが、概要を知っておくだけでも店舗構想やテナント物件選びに役立ちます。

契約後・着工後のトラブルを防ぎ、スムーズな店舗づくり・開業を目指しましょう。

 

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