石橋 光孝㈱秀建 事業部 営業グループ マーケティングルーム ルーム長
一級建築施工管理技士・監理技術者・DIYアドバイザー
サウナ建築費用の考え方|坪単価や費用項目も解説
昨今のサウナブームで開業を考える方が増えていますが、「サウナはいくらでできるのか?」という疑問が最初のハードルになることが多いです。
サウナは規模や業態によって費用が大きく変動するため、ほかの業種に比べて内装費用を予測するのがかなり難しい業態なのです。
今回はサウナ建築にかかる費用の基本的な考え方や費用の項目、ランニングコストなどを詳しく解説します。
費用を安く抑える開業方法なども紹介しますので、開業を検討している方はぜひ参考にしてください。
コラムのポイント
・サウナ施設の坪単価は仕様で大きく変化するため、基本的な考え方を覚えておきましょう。
・工夫次第で安くサウナ施設をつくる方法もあります。
サウナの建築費用は坪単価で考えるのが難しい
ある程度設備や仕様が決まっている飲食やサービス業では、内装工事の費用を坪単価で設定予測することが多いです。
しかしサウナを含む温浴施設は仕様によって費用が大きく変動するため、坪単価で概算を出すのは現実的ではありません。
例えばサウナ設備の一つである水風呂だけでも、仕様によって数千万円~100万円以下とかなり費用に差が出ます。
水道水を使用する水風呂の場合、水質を清潔に保つ循環ろ過機、水を冷やすチラー(冷却水循環装置)などの設備が必要になります。水風呂のサイズや規模によっては、数千万円単位の費用が掛かることも。
一方潤沢な水質基準をクリアした地下水が使える場合、必要なのはポンプ程度で100万円前後に収まるケースもあります。
サウナ部屋も同じように、広さや材質・ストーブの種類・数などさまざまな要素で坪単価が大きく変動します。
どんなサウナ施設・サービスを作りたいのかによって、建築・内装費用は大きく変わることを覚えておいてください。
一般的なサウナ施設の坪単価は180~200万円が目安
サウナ施設の費用を坪単価で考えるのは難しいとはいえ、開業を検討するにあたって全く指標が無いのも困りますよね。
世間一般的なイメージのサウナ施設をまともに造ると、坪単価は180~200万円が目安となります。
仮に50坪のテナントビルに「一般的なサウナ施設」を造る場合、内装・設備工事だけで1億円前後必要になるということです。(新築の場合は坪あたり+50~70万円)
飲食などほかの業種とくらべると、かなり高いという印象を受けた方も多いのではないでしょうか。
サウナは温浴施設という特性上、必要な設備や機械や仕上げはどうしても重装備になります。
例えばサウナ室の断熱構造や浴槽を含む床防水工事、トイレはロビーと脱衣所それぞれに必要になることもありますし、女性用サウナならパウダールームも必要でしょう。濡れた体のまま使用する脱衣所のトイレは、一般的な仕様とは異なり費用も余計にかかります。
特に、水廻りの設備が重くコストに圧し掛かります。水風呂の水を冷やすための冷水チラー(冷却機)や、循環ろ過装置、冷却補給用熱交換装置、塩素滅菌装置類、全自動制御装置類などです。バイブラや高濃度炭酸泉などの装置も人気の設備ですが高額です。
貸出用のバスタオルを保管するリネン庫や、ろ過機・チラー等の機械室など、バックヤードの広さも必要です。
このようにサウナは独自の設備や設計が必要になるため、多額の費用が掛かる上につぶしが効きません。
サウナ開業を検討する際は、このようなリスクを十分承知した上で、確実に利益を上げられる綿密な計画づくりが求められます。
安くサウナ施設をつくる方法はあるのか?
前述したように一般的なサウナ施設は数千万から億単位の初期費用が必要になり、個人事業主の方にとってはかなりハードルが高いのが正直なところです。ただし業態や規模を調整して、安くサウナ開業する方法もあります。
注目すべきは先ず設備です。
水道→安全な水質の井戸水、冷却チラー→製氷機の氷、ろ過装置→使い切り又は掛け流し使用などです。
最近増えているアウトドアサウナもコストを抑える代表例です。
テントサウナは個人所有する方がいるほどローコストですし、山奥の湖畔や川沿いのロケーションを活かせば水風呂の費用も掛かりません。
テントとサウナストーブ、受付・脱衣所の機能を持たせた小屋など最小限の設備なら、坪単価100万円以下に抑えられるケースもあります。ただし、保健所の申請が必須であることは忘れずに。
また、牽引移動が可能なトレーラーサウナ、本場フィンランド発祥のバレルサウナなど、ローコストやお手軽に設置できるタイプも増えています。
初期投資を抑えたい場合は、ローコストにサウナを造る方法も模索してみましょう。
サウナ建築の費用項目
続いて、サウナ建築で発生する費用の内訳について見ていきましょう。
前述したように各項目の費用は施設の規模・仕様によって異なりますが、内訳を知っておけば見積もりを見るとき役立ちます。
造作意匠工事
造作意匠工事は防水・左官・下地工事から木工事や建具・ガラス・金属・内装仕上げなど、サウナ施設の内部を造る項目です。
建物の仕上がりに直結し、お客様から直接見えるため非常に重要な役割を持っています。
建築・外構工事
建物やその外回りや看板など、サウナ施設の外観イメージに大きく関わる部分です。
お客様が入りたくなるようなイメージや視認性、機能性など、外構工事が集客にも影響します。
電気設備
店舗内の照明や電源、サウナ設備に必要な電源などを担う項目です。
建築基準法はもちろん、サウナの場合はさらに消防法で電気設備の設置基準が細かく規定されています。
給排水衛生設備
施設内の給排水管や水風呂、トイレなどの設備も、給排水衛生設備の項目に含まれます。
公衆浴場の一種であるサウナは、水質や供給方法などの指針が定められています。
給湯設備
施設にお湯を供給する給湯設備費用も、規模や建物の状況によって変動します。
お湯を大量に使う場合一度タンクに貯めてから供給する方式もあり、物件の状況によって変わってきます。
空調換気設備
サウナ施設は、ロビー・脱衣所・サウナ内それぞれに換気設備の設置が義務付けられています。
換気基準をクリアするだけでなく、お客様に気持ち良く利用してもらうためにも必要な項目です。
サウナ設備
サウナ室内の造作、ストーブなど施設の主役となる部分です。
広さや仕様によって費用が異なるため、どのようなサウナを作りたいのかコンセプトを練ってから見積もりを取る必要があります。
サウナに関連する水風呂の設備もこの項目に含まれるでしょう。
弱電設備(防災、セキュリティ、通信、OA、音響、映像など)
機械や照明に関わる主電源以外に、通信や電気信号で機器を制御する弱電設備工事も必要になります。
BGMや館内放送を流すスピーカー、映像を流すモニターなども弱電設備に含まれます。
家具什器
フロントや休憩所などに置くテーブルやチェアなどの家具什器費用も、サウナ建築のイニシャルコストの一つです。
サウナの場合特に、ととのいスペースの椅子の種類や数なども重要になります。
設計料
サウナ施設の設計は一般的に設計事務所などに依頼しますが、この時発生する設計料も建築コストの一部です。
設計料の相場は総工費の8~10%前後で、工事発注の有無に関わらず発生します。
サウナのランニングコスト項目
サウナ施設の運営にかかるランニングコストは、主に次のような項目があります。
家賃
テナント物件や借地でサウナ開業する場合、毎月の家賃・地代はランニングコストの大きな割合を占める要素です。
電気や水の容量など物理的な課題、アクセスや立地などの条件をクリアしつつ、経営を圧迫しない家賃の物件を探す必要があります。
人件費
フロント受付、清掃、設備管理などサウナ運営業務を支えるスタッフの人件費も、大きな固定費の一つです。
スタッフの給料はもちろん、採用・教育にかかる費用なども見込んでおく必要があります。
水道光熱費
サウナ施設は毎月の水道光熱費もかなりの額がかかります。
一般的な温浴施設の水道光熱費は一人当たり300円が目安と言われています。
仮に一日100人の集客予定だとすれば、月間利用人数は3,000人で約90万円の水道光熱費が固定費としてかかるということです。
会員制個室サウナ等の施設はさらに一人当たりの水道光熱費がかかるケースもあります。
リネン費用
貸出用のバスタオルや備え付けのシャンプー・ボディーソープなど、リネン費用も毎月の大きな固定費になります。
サウナ施設のコンセプトや規模によってリネン費用も変動するので、しっかりシミュレーションしましょう。
その他
事務消耗品費、広告宣伝費、コンサルや温浴機器メンテナンス・修繕費なども意外と掛かります。
まとめ
一般的なサウナ施設づくりでは、基本的に多額の資金が必要になります。
またサウナ・温浴施設は万が一事業が失敗したとき譲渡や他業種への転向が難しく、解体費用もかなり高額になるなどリスキーな面もあります。
サウナブームは大きなチャンスではありますが、勢いだけで開業を検討するのではなく、穴のない事業計画をしっかり練り上げましょう。
サウナ施設のお見積もり・施工は、店舗施工のプロフェッショナル秀建にご相談ください。
これまで多くのサウナを施工してきた経験とノウハウを基に、施工品質と価格のバランスが取れたサービスをご提供いたします。
サウナに強い設計事務所やコンサルティングのご紹介も可能ですので、ぜひお気軽にお声かけください。
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